台北ヘヴン/台北日誌
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台北生活の体験日誌

#161-165 |
| #161:あと3日〜民主化を守れ〜[17/Mar/2004] |
総統選挙
ここは台湾、「あと3日」とは他の何事でもない3月20日に迫った総統選挙のことである。本土派の陳水扁現総統と統一派の連戦国民党代表がしのぎを削っている。本土派は独立派と呼ばれることがあるが、これは中国が「一つの中国」を主張し、「台湾の独立は許さない」と主張続けたために定着した言葉で、台湾の歴史を調べてみても台湾が中国の一部になったことはないので、正しくない。ちなみに「台湾問題」と言う言葉も、一方的に中国が領土主張をするために出てきただけであって、正しくは「中国問題」である。但し、中国国内にはあまりにも問題が多いので、どれがどれだか分らなくなるのはご愛嬌。
筆者は本土派
既にはっきりしているが、筆者の立場を改めて明確にしておくと、もちろん本土派である。その理由は明解で、台湾に根付き始めた民主主義の芽を大切にしなければならない。アジアにおいてしっかりした民主主義を根付かせている国は、日本と台湾しかない。台湾を中国からの脅威より守ることは、我々の民主主義を守り抜く意味でも大きな意義がある。
4年前に当選した現総統の陳水扁氏の著書「台湾の子」の中に印象的なフレーズがある。「息子よ、君には私を否定する権利がある−」
3月20日は天下分け目の戦いと言われる。先日まで行われていた意識調査では、五分五分の戦いとなっている。民衆が台湾人として正しい判断をすることを信じたい。
| #162:あと2日〜経済的側面と中国が抱える問題〜[18/Mar/2004] |
統一化は経済の助けになるのか?
台湾の民主化を守ると言う一点で、現政権を支持するには事足りる。
しかしながら、低成長率で失業率が6%台となっているので、経済を考慮することも重要である。
「中国の経済成長は目覚しいものがあります。日本経済は中国に支えられています。」日本のマスコミはこぞってこんなことを言う。対中国の貿易黒字を見れば、確かにそうした一面はある。しかし、日本の生産機械や材料が、中国生産を下支えしていると言う見方は出来ないだろうか。グローバル経済と言われるように、世界は緊密に結びつき、相互依存していることを忘れてはいけない。
もちろん、台湾の経済も例外ではない。中国への工場進出は後を絶たず、約100万人もの台湾人が中国で仕事をしている。台湾の人口は2300万人なので、かなりの割合である。こうした工場進出、そこで働く台湾人が中国経済の下支えとなっている。国家間関係が悪いとはいえ、民間では既に密接に繋がっている。もし、統一化路線をとったとしよう、三通(郵便、航空、通商の禁令を解除すること)が実現することにより、国家間の利便性とコストダウンが見込まれる。一方、これが引き金となり伝統産業などの国内産業は大きな打撃を受けることになりかねず、低成長や失業問題は解決されない。
他国に頼った経済路線などをとるべきではなく、既に自立している台湾を伸ばす努力をすればいいことだ。勤勉でマジメな台湾人なら出来る。情報に踊らされ中国のまわしで相撲を取ろうなどと言った、安易な発想は運命を共にすることになりリスクが大きい。統一化で経済が活性化するか否かは、香港の例を見れば一目瞭然である。
中国の抱える問題
・不良債権額はGDPの4割(日本は5%程度)
・一人っ子政策により、戸籍登録されていない人が多く存在する
・所得格差
・政治不信
・経済最優先、環境問題などは先送り
・人民元切り上げ
・SARS、鳥インフルエンザ‥
規制された中国の報道はマイナスイメージを発信しないので、これらの問題はどんどん手遅れになる。恐らく2008年の北京オリンピックが中国発展のターニングポイントとなり、中国の屋台骨がゆらぎ始めるだろう。もはや、手がつけられない問題は台湾にツケが回ってくる。
統一化路線はこうした問題も共有することとなる。少しでも台湾を中国に売ってしまう可能性のある奴に、勝たせてはいけない。
| #163:いよいよ明日〜台湾に残る日本精神〜[19/Mar/2004] |
日本語世代に教えられたこと
台湾には日本統治時代があったので、60才後半以上の方々は日本語が話せます。そんな日本語世代の方々からは、今まで教わることのなかった日本の素晴らしさを教えられました。統治時代の事業が今の台湾の成功に繋がる重要なインフラであったこと、その時に居た日本人が指導者として立派なふるまいであったこと、日本文化の素晴らしさ‥‥。何故、日本の教育がこうしたことを教えてくれなかったのかと思うばかりです。
その一方、今の日本を嘆く声が多いことも確かです。しかし彼らは「日本人よしっかりせい!」と暖かい目で激励してくれます。
サムライたれ!
弱きを助けて、強きに立ち向かう武士道精神が台湾に残っています。例えば台湾語の「アサリ」と言う言葉は、日本語のあっさりが由来で「潔さ」を表します。ある著名な台湾人の方と、お話をさせて頂いた時に「あなたはサムライだ」と言われたことがあります。最上級の誉め言葉と思い、ただ恐縮するしかありませんでしたが、その後スッと背筋が伸びた気がしました。きっと「日本人として立派に生きなさい!」というメッセージだったのだと思います。
世界各国が中国に対してご機嫌を伺いながら擦り寄っています。また、台湾を交渉に使うという酷いこともしています。そんな逆境の中で、台湾は唯一中国に対してNOを突きつけられる、サムライ的国家です。
台湾の命運を決める戦いは、最終局面を迎えました。
状況がわからない
今日は仕事の隙間を縫って有給休暇を取っていた。久しぶりの休暇なので、陳候補の選挙本部を見学し、午後6時から最後の集会が行われる中山サッカー場に向かった。さぞかし熱気のあることと思い、心が躍っていた。
到着してすぐに、妙な空気を感じた。サッカー場を後のする人の群れである。時間を間違えたのだろうか?サッカー場の中に入ると、満員には程遠いが数百人程度の人が旗を振り、陳候補の名を叫んでいるだけだった。状況が把握出来ない‥
一緒に居たカミさんが、台湾人の友人に連絡を取った。
「今、中山サッカー場なのですが、人が帰っているんですよ?」
「え、知らないの撃たれたのよ!」
「‥‥(意味が分からない)」
「ピストルで陳さんが撃たたのよ!」
言っている内容は分かった。しかし、意味が理解出来なかった‥
「風が吹いた」
3月19日13:45、選挙運動中に陳・呂総統候補の乗った車が銃口の標的になった。
そういえば午後3時頃に選挙本部の周辺で、テレビに噛り付いている人の群れがあった。良く確認できなかったがテレビのテロップには「銃」の文字があったことが頭をよぎった。
瞬時に「風が吹いた」と感じた。そして、幸いにも命に別状はないと知った。自分が全くもって不謹慎だと思った。先に命を心配するのがあたりまえだ。
理解出来ない
「風が吹いた」と言う気持ちは疑問に変わっていった。「ヤクザが今回の選挙戦を賭博に利用し、自分に有利なようにやったのではないか?」と言う人がいた。「中共がやった」、「自作自演だ!」‥‥憶測は尽きない。
あまりにも分からないので、銃口を向けた人の気持ちになってみた。狙った相手は静止しているわけではない。一撃で仕留めようとして失敗することもあれば、演出しようとしても命を奪うことになりかねかい。こうした状況は引き金を引くまでもなく、銃口を向けた時点で、相手の命を狙っていることと変わりはない。こんな状況の中、どんな気持ちで引き金を引けるのだろうか?
-- 全く理解できない。
選挙戦は半年程前から繰り広げられてきた。1ヵ月後にせまった2月28日には李登輝総統の元、手護運動で本土派の150万人以上が台湾を南北に手を繋いだ、統一派支持者も3月13日一斉に台湾全土で同数程度の大行進を行った。盛り上げたのは他でもない民衆個々の力だった。
それが、わずかピストルの弾2発で台湾全土を揺るがすことになった。
この銃弾はあまりにも無意味でありながら、あまりにも重大だ。この民主化をすすめてきた台湾でこんなことがあっていいのだろうか?
-- ますます理解できない。
弾の重み
陳・呂両候補とも幸いにも傷は浅く、明日の選挙は予定通り行われる予定だ。この2発の弾の意味は限りなく重い。選挙の行方を決めるだけでなく、台湾の将来の行方をも決めかねない。
結果的に本土化を指示する台湾人への追い風とはなるが、手を繋いで積み上げてきた民意よりも重みがあっては、後味の悪さがのこる。
| #165:陳水扁再選[20-21/Mar/2004] |
混乱なく粛々と
昨日の狙撃事件の慌しさは、紙面とテレビニュースだけだった。今回の選挙の特徴でもあるが、ポスターやノボリが殆どないので、基本的に街中はいたって静かで、雨が降り出しそうな曇り空は、決戦の朝の雰囲気ではなかった。両陣営が昨晩の選挙運動を中止とし、民衆に冷静を訴えたことが有効だったのだろう。
もちろん、選挙権がないので投票場所の雰囲気までは実際には分からない。9時より始まった投票も、混乱なく粛々と行われているように見えた。午前には連候補が投票を済ませ、「昨日の事件は選挙情勢に影響はない」と自信たっぷりにコメントしていた。
午後から投票した陳総統の場合は周辺の警備が厳しく、物々しい状況だった。
まれに見る接戦にて再選
投票終了の16時に各テレビ局が独自の出口調査をもとに、投票状況を分析し始めた。テレビ局にはそれぞれ支持政党があるようで、希望的観測を含めてか微妙に情勢が異なっていた。但し、言えるのはいずれも僅差だった。
午後8時半、違いのあった各局の投票数が揃い始めた‥
「陳水扁当選!」民進党寄りと言われるチャンネルが当選確実を打った。
午後9時、中央選挙管理委員会が最終結果を発表した。
| 陳・呂候補 |
vs |
連・宋候補 |
| 6,471,970 |
6,442,452 |
陳・呂候補の勝利である。僅か3万票しか差が無く、まれに見る接戦であった。
混乱
敗色が濃くなった連候補は21時少し前、支持者が集まっている台北の選挙本部の舞台に現れた。表情のない顔色は、支持者に呼びかけることをためらっているように見えた。
珍しく支持者に深く一礼。第一声がなかなか出てこない。それを見ていると少し同情してしまった。連候補はまず最初に「みなさん、お疲れ様、お疲れ様」と言った。声に張りがまったく無い。そして次に、「選挙結果を受けて、皆さん、冷静に、理性をもって下さい」と静かに言った。さすがに総統候補だけあって、潔い姿を見せるのかと感じた。
しかし、その後すぐ「今回の選挙は無効だと、選挙管理委員会に意義の提出をする!」「今回の選挙は不公平だ」だと、顔を紅潮させ、大声を張り上げて、阿修羅のごとく叫びだした。これまで敗戦でしんみりしていた民衆もすぐ呼応し、「無効!無効!不公平!不公平!」と大合唱を始めた。
国内の各集会所では混乱を極め、徹夜で民衆が騒いでいた。また、深夜高雄の裁判所では支持者が車でつっこむといった暴挙もみられている。総統襲撃後、世界から注目を集めた総統選挙は、どのように報道されるのだろうか?台湾の民主化は未だ未熟とうつるのではなかろうか?
他に方法はあったであろう。しかし、今回連戦候補は、まずは民衆を過剰に刺激することで、騒動を招き起こすことを狙った極めて悪質なやり方である。理由付けが感覚的で、いまだ明確ではない。ましてや開票前には「狙撃事件は選挙結果に影響しない」と何度も表明している。
この混乱を招いた責任は限りなく重い。連戦候補は総統の器でないことを明確に示した。
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